長南洋一
cyoic****@maple*****
2011年 3月 23日 (水) 20:48:48 JST
長南です。 元からある訳文の問題を取り上げるので (さらに、原文の問題まで)、 立花さんにはお気の毒です。でも、マニュアルをせっかく新しくするの ですから、直した方がよいところは直すべきだと思います。 というより、改訂をなさるのなら、前の訳文のチェックはやって おいていただきたかった (^^; > .\"O .SH NAME > .\"O whatis \- search the whatis database for complete words. > .SH 名前 > whatis \- whatis データベースから完全な単語を検索する 原文がトンチンカンだと思います。apropos の簡単な説明が 「whatis データベースで文字列を検索する」なのに対して、 whatis は「whatis データベースで cmplete words を検索する」だ と言っているのでしょうが、それはユーザ向けの適切な「一行説明」 でしょうか。ユーザにとって whatis コマンドが有用なのは、それが 「あるコマンドなり設定ファイルなりが、要するに何なのか」を 教えてくれることです。whatis に引数として付けるキーワードが、 データベース中の文字列にマッチするか、それとも、complete words とマッチするかなんて、ユーザにとってどうでもよいことでしょうに。 一行説明を「コマンドなどの簡単な説明を whatis データベースで 検索する」にでもしておけばよかったのにと思います。whatis データベースにこだわらずに、「コマンドなどの簡単な説明を表示する」 だけでも十分だったでしょう。 ちなみに、man-db の whatis の一行説明は、「display manual page descriptions (マニュアルページの要約を表示する)」です。 ところで、complete words というのは、何でしょうか。 「whole words、完全な単語 (空白、改行、引用符、句読点などで 両端を区切られたアルファベットの文字列)」なのでしょうか。 それとも「キーワードに (過不足なく) 完全にマッチする単語」 なのでしょうか。どちらだかわかりませんが、どちらに取っても 事実上同じことになるようなので (同じですよね)、後者を使います。 # なお、to complete word と言えば、「補完する」の意味のようです。 whatis データベースでキーワードとぴったり一致する項目を検索する (捜し出す) これでも、長すぎるかもしれません。それに、一般ユーザにとって 肝心なこと、すなわち 「whatis コマンドとは要するに何なのか」を 正面から説明していませんし。 > .\"O .SH DESCRIPTION > .\"O whatis searches a set of database files containing short descriptions > .\"O of system commands for keywords and displays the result on the > .\"O standard output. Only complete word matches are displayed. > .\"O > .\"O The whatis database is created using the command /usr/sbin/makewhatis. > .SH 説明 > .B whatis > はデータベースのセットを検索し結果を標準出力に表示する。 > データベースにはシステムのコマンドに関する説明とキーワードが含まれている。 > 完全にマッチした単語のみが表示される。 これを訳した方は、for keywords を system commands にくっつけて 解釈したのでしょうか。それとも、原文の説明不足を補い、噛み砕いて 訳そうとしているうちに、原文からずれて行ってしまったのでしょうか。 いづれにしろ、「名前」セクションと同じ serch A for B という構文 ですから、ほぼ同文に対する apropos の翻訳が正しいと思います。 # なお、「データベースのセット」も意味が通じにくい表現だと # 思います。この a set は適切な訳語が見付からないなら、 # apropos の訳のように、省略した方が無難かもしれません。 比較のために apropos.1 のほぼ同一部分を引用しておきます。 > .\"O .SH DESCRIPTION > .\"O apropos searches a set of database files containing short descriptions > .\"O of system commands for keywords and displays the result on the > .\"O standard output. >.SH 説明 > apropos コマンドは、システム・コマンドの簡単な解説がある > データベース・ファイルからキーワードを検索し、 > その結果を標準出力に表示する。 # どちらの原文も short discription of system commands となっていて、 # apropos の訳文は「システム・コマンドの簡単な解説」ですが、 # whatis データベースには、コマンドだけではなく、設定ファイルの # 説明も収録されているのですから、「コマンドなど」と補充した方が # よいと思います。 whatis の訳文に戻ります。 「完全にマッチした単語のみが表示される」という訳は、実際の動作と 違います。実際には、コマンド名などと、その簡単な説明が表示される のですから。 complete word matches が「キーワードと完全な単語としてマッチする もの (キーワードとマッチする完全な単語)」なのか、「完全に キーワードとマッチするもの」なのかは、ここでも問題になります。 でも、前にも言ったように、事実上同じことでしょう。現行の訳と同様、 後者と取っておきます。とは言え、実際に比較されるのは、コマンド名 などの部分だけであり、また、表示されるのは「単語のみ」ではないので、 表示するのは、コマンドなどの名前がキーワードと完全に (正確に、 ぴったり) 一致 (マッチ) する項目だけである (完全一致する項目だけ である)。 要するに、このマニュアルは、apropos と whatis の違いは、 キーワードが、データを構成する文字列の一部にマッチするだけでも よいか、それとも、単語に過不足なくマッチしなければならないか、 という点だけだと言っているわけです。whatis コマンドはデータ中の 名前のフィールドにしか注目していないようですから、説明として 不十分だと思います。また、これでは、「whatis とは何か」に対する ユーザ向けの答えになっているとも思えません。 いっそのこと、もっとまともな説明を日本語で作ってしまった方が よいのかもしれません。それだけでは、後で改訂する人が困ります から、ユーザには見えない訳注で、その旨書いておくことにして。 -- 長南洋一