切断処理第一段階

まず一方のソケットがcloseされた時の動作を説明する。

(step 1) TCP用ソケットのcloseを行った場合、tcp_close関数が呼び出される。

  1. ソケットのstate_changeメソッド呼び出しにより、このソケットで 待ちに入っているプロセスを起床する。
  2. receive_queueにパケットがあるときは、そのパケットを破棄し、 ソケットを即TCP_CLOSE状態にし、終了する。
    • TCP_CLOSE状態にすると同時に、遅延ソケット 削除タイマ(net_timer関数)の起動を行う (TIME_DONE)。TCPポートキャッシュからの削除も 行う(tcp_v4_unhash関数)。
    • コネクション相手に強制的にRESETを送りつける (tcp_send_active_reset関数)
  • receive_queueのパケットを全て読み出してからcloseを行った 場合はソケットの状態をTCP_FIN_WAIT1に変更(tcp_close_state)する。
  • FINパケットを送信する(tcp_send_fin関数)
    • まだ未送信のパケットがあればFIN情報を相乗りさせ、 (ソケットのsend_headが指すパケット)パケットを送出 (tcp_transmit_skb)。 パケットがない時は、FIN情報だけのパケットを新規 作成(sock_wmalloc)し、送出(tcp_send_skb)する。
  • setsockoptでlinger指定されているときは、 ソケットがTCP_FIN_WAIT2になるまで待つ。(送信相手から FIN対するACKが返送されて来るまで待つ)
    • TCP_FIN_WAIT2状態になったら、遅延ソケット削除タイマ (net_timer)の起動を行う。(tcp_check_fin_timer関数) linger指定の場合、相手のソケットがcloseしなくとも 一定時間経ったらソケットを削除してしまう。
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(step 2) 通信相手から終了処理要求(FINパケット)を受けたときは以下のように動作する。

FINパケット受信処理はtcp_fin関数が行う。

  • このソケットで待ちに入っているプロセスを起床する。
  • FINのシーケンス番号をソケットのfin_seqメンバに記録する
  • FINをうけたのがTCP_ESTABLISHED状態であった場合、そのソケットを TCP_CLOSE_WAIT状態へ推移させ、FINに対応するACKを送出する。

一度FINを受けると、そのシーケンス番号(fin_seq)以降のパケットが到着してもパケットを破棄するようになる(tcp_rcv_state_process関数)。

アプリケーションへのFINの通知は、EOFで行う。パケットの読みだし(tcp_rcvmsg関数)の処理中にFINフラグの立ったパケットを読み出すと、次回の読みだし処理(tcp_rcvmsg関数)はEOFを返すようになる。

(step 3) 先にcloseを行ったソケットは、TCP_FIN_WAIT1状態になっている。これに対し通信相手のソケットからFINに対応するACKが戻ってくるとソケットをTCP_FIN_WAIT2状態に遷移させる(tcp_rcv_state_process関数)。

TCP_FIN_WAIT2状態が2MSL時間以上続かないよう、2MSL時間後にソケットを削除するためのタイマの起動も行っておく(tcp_reset_msl_timer関数)。接続相手のソケットがcloseを行わなかった場合の保険である。

もしFINに対応するACKパケットが届く前に、通常のデータパケットが届いた場合は破棄(kfree_skb関数)してしまう。破棄はするがACKの返送は行う(tcp_ack_snd_check関数)。エラーにはならない。


(NIS)HirokazuTakahashi
2000年06月11日 (日) 22時29分57秒 JST
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